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第16話

ザクロ石を採取しに、山梨の昇仙峡近くにある山に向かいました。

途中、コンビニの駐車場で非常食を買い、装備を再点検しているときに、一人のおばさんに話かけられ

「そんな恰好してどこへ行くんですか?」と聞かれたので「天然のザクロ石を取りに行くんですよ」

と答えました。すると、しばらく沈黙があったあと、おばさんは言いました・・

「もしかして血塗られた伝説はご存知ですか?」と・・「!?」血塗られた伝説・・江戸時代末期、

古物商の伝兵衛は店の経営難により、知り合いの資産家を殺害した。

その場所には現在トンネルがあり、奇奇怪怪な噂がたえないようです・・

その血がザクロ石を真っ赤に染め・・「ごめんなさい、やめましょう」「!?」

突然話を打ち切られました・・この方、実は甲府市にある旅館で働いているようで、

その場所に立ち入る人達に、この話をしているようでした。

おばさんは、その場所に行かないほうがいいよと言い残して去って行きました・・

仲間と相談した結果、ザクロ石目指して足を進めることにしました。

少し気がかりでしたが、コンビニを後にしました。その時、空を流れる嫌な雲行も、山特有の天候と判断し、何か腑に落ちない感覚も、疲れのせいにしたことが、命取りになったということを、この時点では誰もわからなかったのです。目的地に到着してほぼ同時くらいに小雨が降ってきました。

「ああ、やっぱりきたか・・」そう思いながら茂みを抜け、小川を渡り、ガケを登り始めました。

 ザクロ石とは「ガーネット」と呼ばれる1月の誕生石としても有名です。石灰岩と火成岩の層がぶつかっている場所に鉱物が凝縮され、熱水鉱脈は、炭酸塩岩が多い場所で花南岩が干渉して高温熱水が発生します。

交換作用が始まり、炭酸塩岩がザクロ石に変化することを「スカルン」と言います。

この時、鉄、黄銅鉱や亜鉛、金属諸々の沈殿量が大きければ「スカルン鉱床」と呼ばれ、

資源確保の開発対象になり、鉱山学では「接触交代鉱床」と言います。

 さて、ガケから滑り落ちないように、岩のくぼみに命綱を張り、カキン♪カキン♪削ってみました。

地上から15mくらいの場所でザクロ石採取・・ここは灰鉄ザクロ石(カルシウムが主成分)を狙い!

できれば粒が小さいほうが綺麗なので、母岩(クラスター)のザクロ石を採取できればなぁ・・

とコツコツ頑張りました。30分が経過したころ、ゴゴゴゴッ・・雷音と閃光が辺り一面を覆い尽くす・・

小雨から大雨に、一瞬にして嵐へと変貌・・持っていたハンマーが地上へと落下、

なんとか両手を岩肌に食い込ませ地上に降りました。とても採取している状況ではなく、

自然の驚異を受けながら、車に駆け込みました。雨と風は弱まるどころか、さらに勢いを増していきました。日も沈み、辺りは漆黒の闇に包まれ、騒がしかったカラスも声を潜めました。

採取打ち切り・・そう判断を下し、山を下ることにしました。

途中、道路正面左側に気配を感じた・・ゆっくりと何かが迫ってきたのです!?・・巨人!?・・

降りしきる豪雨の中、ソレがどんどん車に近づいてきました!「かっ、観音様??」そう見えました。

全体が金色に輝いているが・・全身に悪寒が走る!!その存在、なんと、土砂にまみれ、ヘッドライトで

金色に見えた巨木だったのです!あわててハンドルを切り返すも、土砂に飲まれました。

そのまま流されてガードレールに激突!勢いを増した土砂が激しくボディーを叩き付ける。

さらに視線を感じ、「ハッ!!」っとして車の助手席側から外を見ると、大きな男鹿がにらみを利かせ

仁王立ちしていました!後方に、その土砂の合間を縫って進む、子鹿や雌鹿が見えました。

たぶん家族を守るため、高台に逃がしていたと思います。そこへ突っ込んでしまい頭鹿が興奮し、

車から離れようとしなかったのです。「やばい・・」と思った瞬間、流れの弱い場所をつき、アクセル全開!そこから脱出することができ、なんとか下山することができました。

宝探しに、不思議と危険がつきものですが、血塗られた伝説を聞き、

この状況を呪われたと考えることもできるし、生きていて幸運だったとも考えられる。

ザクロ石を手に入れたかって?今、生きていることが答えかなぁ・・

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